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新潟日報11月26日号 『五頭からのたより』支え合う暮らしに幸せ

環翠楼の広い庭園が一年で一番鮮やかな季節になりました。色づいたモミジの赤と黄色、老杉の緑、色鮮やかな木々にサラリと掛かった初雪の純白。それぞれの持つ色がお互いの色を引き立たせ、単色で見るよりも美しく目の前に広がります。
 先日、大風が吹き、地面には落ち葉で埋め尽くされました。モミジのじゅうたんのようだとお客様は感激しておられましたが、その傍らで黙々と庭を掃く人がいます。ボランティアで庭の手入れをしてくれるようになって三年。この庭が大好きだと通ってきてくれているおじいちゃんです。
 「落ち葉、きれいだから、そのままにしておいたら?」と声を掛けると、「毎日の積み重ね、今日できることは今日、明日のことは明日」と手を休めることなく働きます。
 ツツジの低木の下にある落ち葉を吐き出している時には「何で皆が通る大きな通りより先に、皆が気付かないような所から掃くの?」と聞いてみました。すると彼は「着物と一緒さ。きれいな着物も帯びも、袖口や襟が汚れていたら台無しだ。この庭もおんなじさ。こういうところをきれいししておけば、庭はなおさらきれいに見えるんだ」と話していました。
 「難儀くなぁい?」と尋ねると「なにさぁ、ここにいるだけで元気になれるがね」と満足そうな笑顔を見せます。おじいちゃんの屈託のない笑顔に心を引かれ、紅葉以上に目を奪われてしまう、そんな自分に驚かされます。
 何事もなく平穏に過ごせる日々、それはおじいちゃんのように、陰で支えてくれる人がいるからだと思います。隣で支えてくれる人はもちろんのこと、見えないところでも自分を支えてくれる人がいることを忘れてはいけないのだと思います。そして私も誰かを支えられるような存在になりたいと思います。
 それぞれの色が織り合って生まれる紅葉の錦絵ではないけれど、お互いに尊重しあい、支え合える日々の暮らしに「豊かさ」や「幸せ」があるのではないでしょうか。
 トレードマークの竹ぼうきを片手に照れくさそうに小さく手を振り、お客様を見送るおじいちゃん。小さな体だけれど、私にはとても大きな存在です。
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写真説明 
色鮮やかに木々が色づいた庭園の落ち葉を掃くおじいちゃん。
この時期は毎日のように庭掃きですが、日々の積み重ねが大切です。

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