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新潟日報5月13日号 五頭からのたより『大地の恵みに季節感じる』

五頭のふもとの田んぼで田植えがほぼ終わりました。萌黄色に染まった木々や青い空がたんぼの水面に映え、上下に春が広がって視界に飛び込んできます。薫風はいくつもの真っすぐな線になって植えられている早苗の間を遠慮なく通り過ぎていきます。
 あぜ道に立つと、土くさく、青くさい、どこか懐かしい匂いに包まれ、自分まで大地の一部になったような感覚になるから不思議です。
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 春耕まで眠っていた大地。そこに人の手が加わり、耕されることによって、眠りから覚め、空気と栄養が入り、生命がみなぎる。私の体の底からもふつふつと力がわいてきます。植物と同じように季節を感じ取り、心と体が反応してしまうのはきっと自然の摂理なのでしょう。
 今の時期、旅館にいらっしゃるお客様のお膳やわが家のまかない料理にはタケノコやウルイ、タラの芽、コゴメなど、五頭の自然から採れた食材が並びます。山菜はこの時期だけ食することができる、まさに旬の恵みであり、田舎ならではの贅沢品です。タケノコはどこででも食べられますが、朝、掘り出したばかりのタケノコにはアクがなく、ほのかに甘いその味は格別です。それを知っているのはここに住んでいるからでしょうか。
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 地産地消という言葉は、その「地」で「産」まれたものを、その「地」で消」費するという意味です。とれたては何を食べてもおいしく、一番贅沢なことだと思います。しかし、なかなかその豊かさに気付かないことも事実です。
 季節とは関係なく、遠い国から運ばれてくるたくさんの食材に慣れ、「旬が」身近にあることに気付かない。そういう食文化になってしまいました。
 最も大切なことは消費できるものが、この地にあることだと思います。
 「地産地消」より「地讃地生」。その「地」を「讃」え、その「地」と共に「生」きる。この地に住ませてもらっていることを誇りに思い、いつでもありがとうの気持ちを持つ。そこから「ちさんちしょう」の本来の豊かさが見えてくるのではないでしょうか。
 季節を心と体で、そして味覚で感じ取ることができるのは、五頭の大地のおかげだと思っています。五頭の大地の恵みに感謝です。
写真説明
ゴールデンウィーク中、五頭山のふもとのあちこちでみられた田植え風景。家族総出で作業に当たる田んぼでは、農家の笑い声が青空に響いていました。
朝一番の仕事であるタケノコ掘りに精を出す環翠楼の男衆。「今日は大収穫だ」と笑みがこぼれます。

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