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新潟日報4月8日号 五頭からのたより『力強い雪割草に勇気得る』

 わが旅館には自称、山野草博士がいます。普段は事務員さんですが、山野草が咲き誇るこの時期ばかりはちょっと変身します。お天気がよいと庭園内を歩き回り、帰って来ては「雪割草、咲いていた!」とにっこり。
 環翠楼の庭園にはたくさんの山野草が咲きます。自生したものがほとんどですが、自然の森ではないので、花が咲くためには、ほんお少し人の支えが必要です。人が林の中を歩いては土が硬くなって芽を出すことができません。環境を保つこと、自然に近い形で支えること、これも博士の仕事のひとつです。CIMG2190.jpg
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 私が村杉に戻って来たばかりの頃、山野草には全く興味がなく、どの花を見ても同じに思えました。華やかな都会から田舎へ戻って来た自分と日陰でひっそりと咲く花を重ね、悲しく思ったりしました。そんな私を博士は外へ連れ出し、自然の素晴らしさを丁寧に教えてくれました。おかげさませ今では庭園内に咲いている花の名前なら何とか答えられるようになりました。雪割草でしょう、カタバミでしょう、シラネアオイ、チゴユリ、ショウジョウバカマ、イチゲ、イカリソウ、シュンラン、エビネ。ほらねっ。
とかく毎日は力みがちですが、たまには力を抜いて下を見たり、立ち止まってみたりすることも悪くないなぁと感じます。雪割草の可憐な花たちは私の心を優しくしてくれます。長い間、重たい雪に埋もれていただろう小さな蕾が、落ち葉の積もる土を力強く持ち上げる姿は、私に前へ進む勇喜を与えてくれます。
 私が困っていると、博士は言います。「自然から学ぶことがたくさんよ」と。身の回りにあるどんな小さなものからでも学ぶことの大きさに変りはない。花を眺めていると本当にそう思います。
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 3月1日、雪割草は新潟県の草花に指定されました。一人一人がこの花をより身近に感じ、大切にしていけたら素晴らしいことだと思います。
写真説明
環翠楼に咲く雪割草。春の訪れを教えてくれる代表的な花です。
「博士」は今日も旅館の庭園に。幸せそうに山野草の説明をしてくれます。

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