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新潟日報3月25日号 五頭からのたより『変わらぬ故郷 支える人々』

 五つの頭を(峰)を持つことからその名がついた山、「五頭山」。(ごずさん)全国森林浴の森百選にも選ばれた自然豊かな五頭山のふもとには三つの温泉があります。
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 新潟県で最古の歴史があるという「出湯温泉」、閑静な一軒宿の「今板温泉」、杉の香り漂う「村杉温泉」。これらをあわせて「五頭温泉郷」と呼んでいます。
 私は村杉温泉の小さな旅館の跡取として生まれ育ちました。当初は旅館業というものにあまり興味のなかった私でしたが、都会での学生生活や社会人としての経験の中で、ふるさとの自然や人々を振り返るようになり、Uターンしました。
 若おかみなどという職業が似合わない私ですが、今は大好きな旅館と五頭のために毎日笑顔で張り切っています。
 なぜ五頭が好きなのか、いつから好きになったのか、自分でもよくわかりませんが、おそらく旅館業をとおして多くの人と接することで、じんわりとそうなったような気がします。人も自然も不思議なもので、接することで味わいもぬくもりも伝わってきます。
 村杉温泉の真ん中には共同浴場があります。地元の人はもちろん、近郊からもお湯をお求めにやって来るといったにぎわいです。
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 番台には地元のおばちゃんが、お風呂の前の駐車場にはトラックに野菜を積んだ八百屋のおばちゃんが愛想良く座っています。ぶらりと歩けば必ず笑顔で話しかけてくれます。
 小さい頃から何も変らない光景かもしれませんが、当たり前のことを当たり前にすることが、簡単ではないということを村杉に戻り、気付くことができました。
 温泉街で一番高い所、お薬師様を祭るお堂にちょこんと腰を下ろしひと休み。ここに登るとぐるりと村杉を見渡せます。
 自然が残り、清水が湧いています。人がいて笑っています。村杉を大きく包んでくれるようなゆるやかな時間があります。この時間も、ここに暮らす人それぞれが大切に想うものを守ってきたおかげだと想います。
 私はこんな想いが感じられる村杉が大好きです。
写真説明
中央に見える頂が五頭山。天気が良い日には抜群の眺め。
村杉温泉の共同浴場近くで毎日、野菜を売りに来る女性。こんな笑顔がみんなに伝わるといいなぁ。

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