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新潟日報12月10日号 『五頭からのたより』日常の中にも小さな旅

「きっと忘れられない思い出になる。6704羽」。この時期、五頭温泉郷の各旅館にはこんな言葉が書かれたFAXが届きます。冬の妖精、白鳥が今年も瓢湖へやってきたというお知らせです。
 私の住む五頭温泉郷近隣の田んぼには、日中、落ち穂をついばみにたくさんの白鳥がやってきます。家族単位で行動する白鳥の群れを、ここへ初めて訪れる方たちは、とても感動してくださいます。小さなころから、この光景を日常のものとして当たり前にしてきた私ですが、お客様と接する中で、ふと私もその感動を求めてみようと小さな旅を試みました。
 ある朝、まだ日が昇る前、朝もやがかかる五頭の里を出発しました。目指すは白鳥の湖、瓢湖です。朝の6時、ツーンと冬の匂いが鼻をさし、冷たい空気が体にまとわりつきます。暗い湖面にはたくさんの白鳥が羽を休めています。この日の日のでは7時。湖の周りには三脚にカメラをセットし、その瞬間を待つ人たちが大勢いることに驚きました。
 辺りが徐々に明るくなり、山の上にかかる白い雲が赤く染まります。明るくなるにつれて白鳥の声は徐々に大きくなり、朝を迎えた喜びをお互いに確認し合うように鳴き声が湖に響き渡ります。その瞬間、はばたく音とともに、水面を走るように力強く飛び立つ白鳥たち。五頭連邦から昇る朝日を背に飛んでゆく優雅な姿は鳥肌が立つくらいの感動を覚えました。強く私の心に焼きついた一瞬でした。
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日中、いつものように田んぼに群れをなしている白鳥たちを眺めます。分かっているようでも分からない世界がたくさんあるものだと思い知らされた瓢湖への小さな旅。もしかしたら、旅は日常の中にたくさんあるのかもしれません。
 いつも見慣れた場所でも、自ら一歩踏み出してみると、新しい何かが見つかるかもしれません。旅は発見。旅の楽しさが向こうから歩いてやってくることはありません。
 自分が楽しさを探すこと、ささいなことでも何かに気付くことが、旅の醍醐味だと思います。
写真説明
五頭山から昇る朝日を背に飛び立つ瓢湖の白鳥たち。
忘れられない思い出が、またひとつ増えた朝でした。

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