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新潟日報 6月24日号 五頭からのたより 『今年も里に ホタル来い』

「ほう ほう ほたる来い あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ ほう ほう ほたる来い」。
子供の頃、近所の友達と夏の夜の散歩道で口ずさんでいた歌。こんなにもたくさんホタルが飛交うのだから、村杉に流れる小川の水はさぞかし甘いんだろうなぁと本気で思っていました。
そんな身近なホタルがいつの間にか消え、その歌を歌うことも聞くこともなくなり、しばらくホタルのことなど忘れかけていたように思います。
ところが、数年前、農家の方に誘われ、田んぼを見に行った際、再びあの感動がよみがえったのです。その田んぼからはかえるの元気な合唱が聴こえ、脇の水路にはドジョウやザリガニが、辺りにはホタルが飛び交っていたのです。
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五頭温泉郷のある阿賀野市笹神地区では、安全でおいしいお米を生産しようと県内でも早くからコシヒカリの有機栽培に取り組んできました。その取り組みのおかげからか、昔では珍しくなかった生き物が再びたんぼに現れるようになりました。
五頭温泉郷でも私達にも何かできることはないだろうかと、8年前から植物性素材を使った環境に優しいエコシャンプーを導入しました。そこにすむ虫や魚などの「自然の命」に優しいものは、私たち人間にとっても優しい。人が環境をつくり、環境が人をつくる。自然の循環の中にこそ人がいるのだと思います。
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数年前から環翠楼の庭園内にある小川にもホタルの餌となるカワニナが見られるようになりました。小川の近くでは、羽はだいだい色、体は金緑色したニホンカワトンボが太陽の光を受け、輝きながら飛んでいます。
昨年は本当にたくさんのホタルが舞いました。天高くのびる杉木にとまって光る光景は、まるでホタルのトンネルのようでした。トンネルを潜りながら手を伸ばせば、ふっと手のひらに舞い込んで来、ぽかぁぽかぁと手の中で癒しの光を与えてくれました。
ホタルの成虫は10日から15日間しか生きられないそうです。単に、ホタルの一瞬の光に思いを寄せるのではなく、この美しい小さな光が大きな自然につながっていると思いたいものです。自然の営みや連鎖が滞りなく行われているということにこそ喜びを感じる。そしてその喜びを分かち合うことが、私たちにとって豊かな自然といえるのではないでしょうか。
「ほう ほう ほたる来い」とあちこちから聞こえる季節がもうすぐやってきます。五頭の水は砂糖水のように甘くはありませんが、自然にとっても私たちにとっても優しい水であることは違いありません。
今年も五頭の里にたくさんのホタルが飛交いますように。
写真説明

田んぼを覗き込む村杉の男の子たち。この子たちが大きくなった時、「村杉って何かいいよな」といえる環境であることを願います。
五頭温泉郷の旅館で使っているエコシャンプーやエコせっけん。天然素材製なので、自然にも人間にも優しい。

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