新着情報

新潟日報4月22日号 五頭からのたより『130年の広間に音楽の息吹』

 ハープの音色を聴いたことがありますか?間近でご覧になったことはありますか?優雅で滑らかな曲線美とピカピカの金色に装飾されたつややかな姿。赤と青と銀色の弦を持つ楽器。私の心は一目で奪われました。
 先日、ハープとフルートの演奏会が当館で行われました。130年前に建てられた会場の広間には音響設備も整っておらず、ステージもありません。
 シーンと静まり返った会場内。ハープ演奏者の奥田恭子先生のスッと息を吸い込む息遣いから演奏は始まりました。柔らかな指先から奏でるハープの音色が響き渡ったのと同時にお客様のほおが高潮したのを忘れられません。
 ハープとフルートの音色が会場だけではなく、そこにいるお客様の心をも包み込んだようでした。演奏者のバックに広がる庭園の景色が音楽にあわせて靜に春を感じさせてくれ、古びた広間が一気に贅沢な空間に変りました。
CIMG2175.jpg

 演奏の合間、先生がハープの説明をしてくれました。ハープは指先だけで弾くのではなく足でペダルを踏みながら弾く、弦は温度にとても敏感で曲の合間には必ず弦の調整が必要だと。優雅な楽器を思われがちですが、重量のあるもので支えるのに体力が必要なのだそうです。
 私の一目ぼれした楽器は大変な楽器であることが分かりました。すてきな楽器もその楽器を十分理解した演奏者がいなくては綺麗な音色を奏でることはできません。
 当館の築130年の大広間も、そこに建っているだけではただの古い建物かもしれません。実際、この度のコンサートを開くまでは、私の心の中ではそう思っていました。まさか、廊下の窓を開け放ち、庭園の木々を背景にした自然が、音楽と一体になったステージになるとは夢にも思っていませんでした。何が功を奏するか分かりません。
 私達は普段、自ら勝手に値決めしている節があります。無いものをねだり、あるものを使わない。もしかしたら気付いていないだけかもしれません。身近にあるもの、そこに佇むもの、隣にいる人、それらには大きな可能性が含まれていると思います。
 観光や地域づくりもそういうところに目をむけてみることも大切だと、気付かされたコンサートでした。
CIMG2276.jpg

写真説明
コンサート会場の広間から見渡す環翠楼の庭園。モミジの芽吹きは赤色から始まり、その後、柔らかな緑色の葉が開く。
ハープ演奏者の奥田恭子さん(右)とフルート演奏者の正木燈子さん。奥田さんは2005年、モスクワで行われたVera Dulova国際ハープコンテストで優勝。正木さんはアジア国際音楽コンクールで2位(1位はなし)を受賞。柔らかな春の香りを届けるようにハーモニーを奏でる2人。

To top